私事ですが、2010~2011年頃にボイストレーニングに没頭していました。ボイストレーニングの教本を買い集めたり、動画を視聴したり、「れみぼいす」(当時「みくぼいす」)で質問したりと、ずいぶん熱中したものです。
今回から、ボイストレーニングで得た知識を、全十五回に渡って書いてゆこうと思います。「裏声を練習すればミドルボイスが身につく?」「ミドルボイスって地声? 裏声?」「ミドルボイスの音源が聞きたい」そんな方はぜひお読みください。
ボイストレーニング論全十五回の要点だけ知りたい人のためのまとめ
- 人間の声は、「地声」「裏声」の二種類でも「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」の三種類でもない。「チェストボイス(地声)」「チェストボイス(裏声)」「ミドルボイス(地声)」「ミドルボイス(裏声)」「ヘッドボイス(地声)」「ヘッドボイス(裏声)」の六種類である。
- ボイストレーニングの本や動画でいわれる「ミドルボイス」「ヘッドボイス」のほとんどは、「裏声」に共鳴を加えて倍音を増やしたものであって、「地声」ではない。
ボイストレーニング論にて想定する読者層
このボイストレーニング論は、以下のような読者をペルソナとして書いています。
「20代の男性。高音が地声で出せないのでボイストレーニングを始めたら、『ミドルボイス』や『ヘッドボイス』という概念があることを知った。書籍やWebサイト・動画で詳しく調べてみたが、定義や意味・音源が人によって全く違うため、どれが正しいのか分からなくなってしまった」
「カラオケ板やYahoo!知恵袋は意見が乱立しているし、リード『ベル・カント唱法』やフースラー『うたうこと』は理論的すぎて内容が分からないし、『れみぼいす』などのWebサイトやブログには批判もあって正しいのかどうか判断できない。結局、どれが正しいのか、なぜ正しいのか知りたい」
上のペルソナは、ボイストレーニングに没頭していたかつての私自身でもあります。ですので、全くの初心者向けではなく、ある程度ボイストレーニング理論を勉強した人向けの内容となります。こうした人たちのニーズに応えるべく、「六声区」という概念を唱えたり、ボイストレーニングの書籍や動画を考察するなどしています。
ただ、ボイストレーニングの初心者の方が読むことも考慮して、内容は丁寧に書いています。最初の記事で、ボイストレーニングの目的といった基本的なことから述べているのはそのためです。
ボイストレーニング論の内容について
上記のような人を読者層に想定しているため、理論的な面に偏り、実践的な面は少ない記事になります。ですので、実践的な内容を期待されている方にとっては期待外れかと思います。
ただ、実戦的な内容を期待する人にとっても、読んで損はない記事だと思います。世間には誤った知識を流布するボイストレーナーやWebサイトに溢れていますから、それを見抜き、正しいボイストレーニングを身につけるために、理論的知識を身につけておくのは重要です。
ボイストレーニング論全十五回の流れ
全十五回の記事の中で、「どこに欲しい情報があるか」を書いておきます。皆様の欲しい情報に応じて、記事をお読みください。
各回 | 内容 |
---|---|
その一 | 総論。そもそものボイストレーニングをやる目的や内容について知りたい人向け。 |
その二 | 総論。ボイストレーニングの理論が混乱している理由を知りたい人向け。 |
その三 | 「地声」「裏声」について知りたい人向け。 |
その四 | 「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」について知りたい人向け。 |
その五 | 「地声」「裏声」と「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」の関係を知りたい人向け(「六声区」という独自(?)理論をここで書いています)。 |
その六 | 「ベル・カント唱法」とポップスの「声区」の違いを知りたい人向け。 |
その七 | 「地声」「裏声」と「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」の音源を聞きたい人向け。 |
その八 | 「ヴィブラート」の音源を聞きたい人向け。 |
その九 | 「ヴィブラート」の理論的な説明を知りたい人向け。 |
その十 | ボイストレーニングの書籍・動画・サイト・ブログの比較考察の方針説明(読まなくても可) |
その十一 | 巷にあるボイストレーニングの書籍について知りたい人向け。 |
その十二 | 巷にあるボイストレーニングの動画について知りたい人向け。 |
その十三 | 巷にあるボイストレーニングのサイト・ブログについて知りたい人向け。 |
その十四 | その一~その十四の内容まとめ。 |
その十五 | 「喉のへこみ」や、「ミドルボイス」「ヘッドボイス」発声のヒント(あくまでヒントなので、鵜呑みにはしないでください) |
ボイストレーニング論に対する反響
光栄なことに、当ボイストレーニング論を紹介していただける機会に多く恵まれました。中には批判的な意見もあるので、読者の方も私の記事を鵜呑みにせずにお読みいただければ幸いです。
ボイストレーニング論全記事一覧
- ボイストレーニングはなぜ必要か──ボイストレーニング論その一
- ボイストレーニング理論はなぜ混乱しているのか──ボイストレーニング論その二
- 「地声」「裏声」とは何か──ボイストレーニング論その三
- 「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」とは何か──ボイストレーニング論その四
- 「声区」に関する理論と誤解──ボイストレーニング論その五
- 「ベル・カント唱法」とポップスの「声区」論──ボイストレーニング論その六
- 歌手の「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」比較──ボイストレーニング論その七
- 「ヴィブラート」とは何か──ボイストレーニング論その八
- 「ヴィブラート」に関する理論──ボイストレーニング論その九
- ボイストレーニング理論比較──ボイストレーニング論その十
- ボイストレーニング教本比較──ボイストレーニング論その十一
- ボイストレーニング動画比較──ボイストレーニング論その十二
- ボイストレーニングサイト・ブログ比較──ボイストレーニング論その十三
- ボイストレーニングにありがちな誤り・誤解・疑問──ボイストレーニング論その十四
- 「ミドルボイス」「ヘッドボイス」を出すためには──ボイストレーニング論その十五
はじめまして。ひかると申します。
前々からボイストレーニングに興味があり、色々なサイトを渡り歩いているうちにこのサイトにたどり着きました。
初めは正直「ミドルボイス(地声)?ミドルボイス(裏声)?何変なこと言ってるんだ?」と思いました。
しかし、記事を読み進めていく事に今まで私がなんか違うな。これでホントに合ってるの?と感じていたところを根拠もつけて説明していらっしゃって感激しました。(ミドルボイスまたはヘッドボイスらしきもののほとんどは共鳴を強くしたり閉鎖を強くした裏声。声帯閉鎖を鍛えてミドルボイス習得は間違い等)
次第にミドルボイス(地声)等の意味も理解でき、いまでは流星群さんの見解に共感しています。
また、動画による説明が非常にわかりやすく、ミドルボイス・ヘッドボイスの聞き分けが自分の中で確立できたような気がします。
しかし、トレーニングの仕方については理由はわかるのですが、あまり触れられてなかったのが残念というか、この人の推奨するトレーニングをもっと聞きたいと思わずにいられません。
そこで、いくつか質問をさせていただきたいなと思い、コメントさせていただきました。
Q1,私はヘッドボイス(裏声)に自分の耳では聞こえる声を出せるのですが、その時に喉仏の下が物凄くへこみます。
それと、音量を大きくしようとしても家族に何変な声出してるの?くらいの音量しか出ないのと息漏れはしてない(多分)、頭に響くイメージとかがない、鼻腔共鳴しなくても出せるのが特徴です。
ミドルボイス(地声)・ヘッドボイス(地声)を出してる人はその部分がへこんでる事が多いと書いてあったのですが、ヘッドボイス(裏声)でもへこみますか?
それとも裏声成分の多いヘッドボイス(地声)なのでしょうか?
Q2,カラオケなどで歌うとき地声のような声質でhiDくらいの曲も歌ったりします。
音域的におそらくミドルボイス(地声)だとは思うのですが、mid2Eくらいから声量をおおきくしないと高音がでず、すぐ息が切れたりすごく力んだりすごく疲れます。
これは筋肉を緊張させてつかってるのが原因で輪状甲状筋をしっかり使えるようになれば、力まず声量をコントロールしたり疲れなくなるという解釈で合っていますか?
Q3,ミドルボイス(地声)・ヘッドボイス(地声)の習得には筋力トレーニング的なものはあまり必要ではなくて、感覚を掴めば出せるようになるものですか?
筋力トレーニングが重要ならばおすすめのトレーニングメニュー。
感覚が大事ならば、”遠くの人を大声で呼ぶときはミドルボイス(地声)がでてるときあるよ”などイメージしやすいシチュエーションなどを教えていただけるとすごくありがたいです。
質問は以上です。
Q1に関しては喉の写真や録音音声を送る機会を設けていただけたらいいなと思います。
いきなり身勝手な質問をしたりしてすみません。
流星群さんの見解を参考にしたいので、是非返信お願いします。
> ひかるさん
初めまして。コメントありがとうございます。
そうでしょうね。私の知る限り、「ミドルボイス」を「地声」「裏声」で区別している理論は他に皆無なので、最初戸惑うのは当然だと思います。
巷で広まっている「ミドルボイス(地声)」は実は「ミドルボイス(裏声)」であるということはもっと知られてよいのですが、なかなか知られませんね。
こういった誤った意見もまた、正しいボイストレーニングを阻むものだと感じます。
●Q1
これは私の説明がまずかったかもしれませんが、喉のへこみは、「地声」「裏声」関係ないと思われます。
高音になるにしたがって声帯が適切に進展しているとき、喉仏の下はへこむと考えられます。
そして、声帯の伸展と声帯の振動は別の話ですから、喉仏の下がへこんでいるからといって「地声」とは限りません。
伸展していても、声帯靭帯だけが振動しているなら「裏声」です。
●Q2
確認ですが、ひかるさんは女性でしょうか?
男性ならmid2Eあたりは「チェストボイス(地声)」の限界にあたるので力むのは分かりますが、女性だとmid2Eはそれほど力まなくても出せる音程かと思います。
もちろん、女性でも声の低い人はいらっしゃいますし、mid2Eあたりが苦しくても悪いことではないのですが。
ひかるさんの声を実際に聞いていないので一概にはいえませんが、「声量をおおきくしないと高音がでず」「疲れる」というのは程度問題だと考えています。
事実として、男女や「地声」「裏声」問わず、「ミドルボイス」「ヘッドボイス」は基本的に声量が大きくないと発声できませんし、発声していると疲れは出ます。
ときどき、「ミドルボイスやヘッドボイスならもっと楽に高音が出せる」と書いているものがあり、それは全くの間違いとはいえませんが、「ミドルボイスやヘッドボイスを出せば、全く疲れることなく、魔法のように声が出せる」というわけではありません。
ただ、あまりにも疲れるとか、歌った後に喉がぼろぼろになっているということであれば、必要以上に声帯を酷使している恐れはあります。
それは、正しい発声であっても歌いすぎているからかもしれませんし、単純に発声が間違っているからかもしれません。
発声が正しくても間違っても疲れることはあるので、一概にいえないわけです。
●Q3
これは非常に難しい質問ですね。私自身、きちんと答えを見出していないからです。
私自身、ある日気がつくと「ミドルボイス(地声)」を出せるようになっており、それからは「声を頭の上に響かせるように」といった従来の感覚的な説明が理解できるようになりました。
「ああ、あれはああいう意味だったのか」と。
が、「ミドルボイス(地声)」を出せなかった当時の私がああいった感覚の説明を受けても、ほとんど分からなかったように思います。実際にそういう感覚で声を出せないからです。
月並みな答えで申し訳ありませんが、「一人一人が感覚を掴んで身につけるべきではあるが、人の感覚はそれぞれ違う以上、他人の感覚をあまりあてにしてはいけない」と思っています。
強いていうなら、巷のボイストレーニングで提唱されるような喉のストレッチやリップロール、喉の脱力などは、やって損はないと思います。
ただ、それをやったからといって「ミドルボイス」「ヘッドボイス」に繋がるとは限らない(あくまでも基礎練習)ことは重要ですね。
当ブログにお問い合わせフォームがありますので、もし写真や音源等ありましたら、こちらからURLなどお送りいただければと思います。
あるいは、画像や音声ファイルなどを添付ファイルでお送りしたければ、以下の私のメールアドレスに直接お送りいただくのでも結構です。
meteorite1932@gmail.com
nikoと申します。カラオケで上手に歌えるようになりたいと思い、独学でボイストレーニングをするために動画の視聴やボイトレ関連サイトの閲覧をしていたのですが、混乱していました。
具体的には「ミドルボイス」と「ヘッドボイス」=「裏声」であり、
芯のあるなしで呼び方が変わる?と認識していました。
今回一連の15の記事を読んで「ミドルボイス」と「ヘッドボイス」にも地声と裏声がそれぞれ含まれる(「ミドルボイス(地声)「ミドルボイス(裏声)等」のだと知り、「ミドルボイス」や「ヘッドボイス」とは、声帯の伸展や削減度合に応じて名づけられた概念であって、「裏声」か「地声」かとは関係がないことが分かりました。(私の理解度は現在、15の記事全体の内容を100%とした内の7割程度です)
世の中のボイトレ法がなぜ混沌としているのかを解説した文章や「地声」「裏声」「~ボイス」の概念の説明が理解しやすいと思い、感謝しております。
私にとってこのブログ記事の内容は論理的で理解しやすいです。
(記事の内容とは無関係ですが、管理人様の記事の大きなテーマのうちポケモン、哲学、漫画、ボイトレは私の趣味でもあります。漫画(というよりはアニメ)、哲学(というより宗教)は特定の分野しか知りませんが・・・)ですので少し親近感を抱きました。
これからも管理人様の様々なテーマのブログ記事を読みたいです。よろしくお願いします。
はじめまして。かなり熱心に研究されているようで、興味深く拝見しております。
さて、昨今のボイトレブーム(=ハイトーンブーム)の潮流の中、一つ注目している事があります。それは巷のボイトレ動画の投稿者はテノールである比率が圧倒的に高いという事です。私の推測になりますが、声帯が短い場合は声区の分離が弱い傾向に有りますし、初めから地声ミドルを発声できた方が多いのではないでしょうか。
ここで危惧されるのが、『出来ない人間が出来るようになる為に何をすれば良いか』という観点において、全く的外れな事を述べてしまっていないかという事です。現に『まずはチェストボイスでmid2Gまで出せるようになろう』などというテノールに限定したとしても疑問が残る主張をする方が少なからずおられます。
管理人様には是非ともこのテーマについて掘り下げて頂きたいと思います。