アニメ・劇場版「あしたのジョー」「あしたのジョー2」について──「あしたのジョー」論その八

「あしたのジョー」第八回です。今回はアニメ・劇場版「あしたのジョー」「あしたのジョー2」について説明します。

※「あしたのジョー」論は全十三回です。全記事一覧をご覧になりたい方は、タグ「あしたのジョー」か、記事「『あしたのジョー』論」をご覧ください。

目次

原作とアニメの相違点

アニメ「あしたのジョー」「あしたのジョー2」は毛色の異なる作品ではありますが、原作と違っている点があり、その点では二作品とも共通しています。それは、

  • ボクサーではなく人間としての矢吹丈を描いている
  • 矢吹丈を「風来坊」「旅人」だとしている

の二つです。

アニメ二作品には、原作にはなかった交流が非常に多い。西寛一との友情描写や紀子との日常会話、段平との親子のようなつきあいなどです。出崎統監督が、ボクシングはジョーの人生の一部にすぎなかったといっているのも示唆的です。

また、アニメではジョーが旅好きであることが強調されています。「あしたのジョー」の第66話「明日への旅立ち」では見知らぬ子どもと楽しそうに旅について語りますし、最終話「燃えろ 遠く輝けるあしたよ!!」では最後に旅に出てしまいます。「あしたのジョー2」では幼少期から旅に出るジョーが描かれますし、最終話「青春はいま…燃えつきた」ではホセ戦後に旅に出たような描写があります。

原作ではジョーが旅をしていたのはドヤ街以前の話で、旅好きという設定は特にないのですが、アニメではこの設定を付与することによって人間としてのジョーを描くことに務めています。

アニメ、特に「あしたのジョー2」は評価も高い一方で批判も多いのですが、その理由はこのあたりに理由があると思われます。「僕がとことん好きになった『あしたのジョー』は、そこにはない」(ジョーと紀子 『あしたのジョー』)という声が聞こえるのも、アニメは終始明るい雰囲気を出すことによって、ボクシング一辺倒の原作後半の暗い雰囲気を変えたからでしょう。

アニメ「あしたのジョー」

1970~1971年に放送された全79話のアニメです。途中で原作が連載休止していたためにアニメが追いついてしまい、アニメはカーロス戦までで終わってしまいました。なので、原作とは異なるオリジナルのラストになっています。

追加されたもの

キャラクターの心情描写
矢吹丈・力石徹・白木葉子などの主要キャラクターの心情描写が増えています。
アニメオリジナルエピソード
原作にはなかったアニメオリジナルエピソードの回がたくさんあります。
ジョーの幼少期のエピソード
原作では全く描かれなかったジョーの幼少期のエピソードがいくつか追加されています(第25話「野良犬の掟」・第69話「牧場の子守唄」)。

アニメオリジナルエピソードは、

話数 粗筋
第10話「赤い夕陽に吠えろ!」 ジョーが少年院からの二度目の脱走を図った後、力石への復讐のために少年院に戻る。
第22話「まぼろしの力石徹」 青山の少年院退院にあたって、ジョーが院内ボクシング大会に出場する。
第25話「野良犬の掟」 丹下拳闘クラブの発会式を終えた夜、夜な夜なジムを訪れた人物は元少年院収容生のゲリラであった。
第33話「初勝利バンザイ」 初試合後に花を贈りに来た紀子だが、ジョーは紀子と葉子の花を比較し、紀子を怒らせてしまう。
第34話「ボクサー志願」 丹下拳闘クラブに入門を希望する青年を段平は追い返すが、ジョーは彼に練習を指導する。
第35話「ガンバレ! 西」 ボクサーをやめようとする西を、皆は様々な方法で引き止めようとする。
第40話「白銀に誓う」 ドヤ街の住人が慰安の温泉旅行に出かける。
第65話「リングある限り」 三連敗を喫したジョーはドサ周りの河野三郎という男に出会う。一方、紀子はジョーに引退を勧める。
第66話「明日への旅立ち」 ドサ周りに出るジョーが駅に向かう途中、ある子供に出会う。
第67話「小さな冒険旅行」 チビ連がドサ周りに行ったジョーに会いに行く。
第69話「牧場の子守唄」 ジョーと稲葉が山登りをしていたところ、牧場を経営するユリという娘とその母に出会う。
第70話「気になるあいつ」 カーロスとロバートがドヤ街に立ち寄る。
第74話「今日からの出発」 西のボクサー引退にあたってドヤ街の皆で海水浴に行く。
第77話「男の闘い」 カーロスとロバートに世界タイトルマッチ挑戦の誘いがあり、カーロスは日本でジョーと試合をするか世界タイトルマッチに挑戦するか悩む。

変更されたもの

ジョーと葉子の出会い
原作では裁判所でジョーと葉子が初めて出会うことになっていましたが、アニメでは裁判以前から面識があることになっています。ドヤ街の子供たちにプレゼントをしていた葉子を見つけたジョーは、葉子を騙してやろうと寄付金詐欺事件を起こしたことになっています。
ジョーと力石の出会い
原作では力石が「あしたのために その2」を運びに来たところでジョーと出会っていましたが、アニメではそれ以前の少年院の食事のときにジョーと力石の目があっており、面識ができています。
ジョーと南郷の試合の結末
原作ではジョーの反則負けでしたが、アニメではジョーのKO負けになっています。
ドサ周りの結末
原作ではジョーがドサ周りの草拳闘で稲葉と試合をした後、稲葉が一方的にジョーを見送って終わりでしたが、アニメではジョーと稲葉、ドサ回りなどの友情描写が増え、最後はジョーが皆に胴上げされながら見送られます。
カーロスの来日の経緯
原作ではカーロスは試合のために来日しただけで、葉子の思惑(ジョーを復活させる)は知らされていませんでした。アニメでは、カーロスはジョーを復活させるために来日した(カーロス本人もそれを知っている)という設定になっています。
物語のラスト
カーロス戦の後、ジョーが葉子に力石とカーロスの件で感謝し、二人で笑いあうという円満な終わり方をしています。その後ジョーが旅に出てしまい、段平が「戻ってくるさ。奴があしたのジョーである限りはな!」と叫んで最終話が終わります。

削除されたもの

ジョーとカーロスのスパーリング(二度目)・エキジビジョンマッチ4回戦
原作ではジョーとカーロスはスパーリングを二度、試合をエキジビジョンマッチ4回戦と公式戦10回戦の二度行っていますが、アニメでは二度目のスパーリングとエキジビジョンマッチ4回戦が省略されました。
カーロスが飛行機のタラップで滑り落ちる場面
原作ではカーロスのパンチドランカーを予感させる重要な場面ですが、アニメでは最終話なので省略されました。

総評

アニメ「あしたのジョー」と原作の大きな違いは、ジョーと力石の因縁が強調されているところですね。ジョーと力石が食堂で目があい互いに宿命のライバルであることを予感する場面とか、力石が「(自分並に強い奴が少年院に現れて)おれは嬉しかった」とジョーの存在を喜ぶ場面とか、原作に比べると力石がよりかっこいいキャラクターになっています。

もっとも、その割に慰問劇で葉子を見てでれでれしたり、第24話「帰えってきたドヤ街」では丹下ジムに葬式の花を贈りつけたりと、かっこ悪い性格も強調されているのですが……。

あと、スパーリング前にジョーとカーロスで乱闘に参加したり、カーロスとドヤ街の関わりが描かれたりと、カーロスのキャラクターも原作に比べてたくさん描かれています。もっとも、原作と違ってスパーリング一回、試合一回なので駆け足の感は否めませんが……。

評価すべき点は、原作では心情描写がなかった箇所が補完されたところでしょう。例えば、少年院でのジョーと力石徹の試合中のジョーの心情、その試合後の力石と葉子の心情、ジョーと青山の試合中のジョーの心情などです。

女キャラクターについては、紀子がジョーに恋していると思しき描写があったり(原作ではそれほどなかったはずですが)、チビ連の中でサチが妙にジョーに優遇されています。

出崎演出満載な作品だけに、映像的な見所もたくさんあります。特に第1話「あれが野獣の眼だ!」冒頭のジョーが闊歩する場面、第10話「赤い夕陽に吠えろ!」のジョーが夕日の砂浜を走る場面、第46話「死を賭けた男」の力石と葉子が海に来ている場面などはとても素晴らしい。

その一方で、問題点もあります。例えば、ジョーが力石の死後テンプルを殴れなくなったという設定はアニメにもあるのですが、なぜかドサ周りで普通にテンプルを殴っているのです。これのせいで、ジョーがカーロスとのスパーリングでテンプルを殴れるようになったという展開が無意味になっています。

あと、アニメオリジナルのエピソードで、キャラクターを無視して書かれたような脚本が多い。第33話「初勝利バンザイ」で紀子のくれた花を邪険に扱うジョーや林屋の商品を喧嘩で投げつける紀子、第34話「ボクサー志願」で丹下ジムに入門に来た青年に詐欺紛いの指導をするジョーなど、キャラクターからは考えられない行動をする回が多いのです。

特に気になるのが第35話「ガンバレ! 西」。ボクサーとして自信を失った西を皆が応援し、最後にはジョーが涙まで流すというアニメオリジナルエピソードです。話の内容自体は悪くないのですが、この後の第43話「残酷な減量」で西は減量に耐えきれずにうどんを食べてしまうので、話の流れがおかしいことになっています。

原作だと、うどんの件でジョーに叱られた後に西が真剣にボクシングに取り組むという流れになっています。しかし、アニメだと、第35話でジョーに涙ながらに応援されたにも関わらず、第43話でその期待を裏切ってしまい、その後西がボクシングに真剣になるという流れです。第35話でジョーの応援を受けた西が、隠れてうどんを食うとは思えないのですが……。

なお、裏話ですが、第1~40話までは山崎忠昭と雪室俊一の二人で脚本を担当していたのに、第41話以降は二人がいなくなります(Wikipedia「あしたのジョー」の「各話リスト」参照)。山崎『日活アクション無頼帖』と雪室『テクマクマヤコン―ぼくのアニメ青春録』によると、これは二人が出崎監督と揉めて降板となったことに由来するそうです。ご興味のある方は【精力】出崎統とその素行【絶倫】というスレッドの152番153番の投稿をご覧ください。

アニメ「あしたのジョー2」

1981年に放送されたアニメです。力石の死後からホセ戦までの部分が放送されたのでカーロス戦まではアニメ「あしたのジョー」と被りますが、内容や作画などは大きく異なっています。

原作完結の8年後、アニメ「あしたのジョー」放送終了の10年後に作られたこともあり、原作やアニメ第一作とは絵柄も雰囲気もかなり異なります。アニメ第一作では抑えぎみであった三回パン・ハーモニー(止め絵)などの「出崎演出」が大量に使われています。

追加されたもの

新規キャラクターが追加された
「あしたのジョー2」にはオリジナルキャラクターがたくさん登場します。ジャーナリストの須賀、元全日本チャンピオンの村上、レオン・スマイリー、カロルド・ゴメスなどです。
アニメオリジナルエピソード
「あしたのジョー」にも増してアニメオリジナルエピソードが多くなっています。
ジョーの幼少期のエピソード
原作では全く描かれなかったジョーの幼少期のエピソードがいくつか追加されています(第44話「葉子…その愛」・第45話「ホセ対ジョー…闘いのゴングが鳴った」・第46話「凄絶…果てしなき死闘」)。

アニメオリジナルエピソードは、

話数 粗筋
第10話「クリスマスイブ…その贈り物は」 ジョーはクリスマスイブにサンタクロースの格好でプレゼントを振舞うカーロス・リベラと出会う。
第12話「吹雪の夜…その果しなき戦い」 世界タイトルマッチ用の秘密兵器を繰り出したカーロスに、ジョーが立ち向かう。
第13話「丹下ジムは…不滅です」 カーロス戦後、正月を祝ったドヤ街の住人は西の引退披露パーティーを行う。
第15話「誰のために…必殺ラッシュ」 ウスマン・ソムキットとの試合の直前、ある雑誌の記事を読んだジョーは海外に旅立つことを決意する。
第16話「遠い照準か…世界への道」 ジョーは須賀というジャーナリストに出会った後、ホセとカーロスの試合のビデオを見る。
第18話「あのナックルが…烙印のメッセージ」 葉子と会ったホセは、一目見たジョーの印象を口にする。
第19話「戦うコンピューター…金竜飛」 ジョーと段平と葉子は、須賀が手に入れた金竜飛の昔の試合ビデオを視聴する。
第21話「力石の…唄が聞こえる」 段平の制止を振り切ったジョーは、減量のために白木ボクシングジムの地下室に閉じ籠る。
第26話「チャンピオン…そして、敗者の栄光」 ジョーはかつてホセと戦ったことのある村上というボクサーに出会う。
第27話「ボクシング…その鎮魂歌」 ボクシングジムのトレーナーとなったウルフ金串がジョーに金を借りに来る。
第30話「偉大なるチャンピオン…ホセ」 ハワイで須賀からホセの話を聞かされたジョーは、ホセと乗馬競争を行う。
第32話「さらば…古き愛しきものたち」 新たな丹下ジムを建設することになり、ジョーたちは旧丹下ジムに別れを告げる。ドヤ街の廃屋で、ジョーとチビ連はゴロマキ権藤に出会う。
第33話「アメリカから来た13人目のキング!?」 ジョーと世界バンタム級一位のレオン・スマイリーが試合をする。
第34話「カードと共に散った…あいつ」 ジョーと世界バンタム級一位のレオン・スマイリーの試合が終わり、二人は友情を深めるが……。
第35話「チャンピオンは…ひとり」 WBCチャンピオンのホセ・メンドーサとWBAチャンピオンのカロルド・ゴメスが試合をする。
第40話「燃えろジョー…標的が近い」 ジョーはサナトリウムに行き、廃人となったカーロスと時を過ごす。
第43話「ジョー・段平…二人の日々」 ジョーと段平は葉子を避けるために別荘に移り、そこで練習を行うことにする。
第44話「葉子…その愛」 世界タイトルマッチ前日、かつて借りた金を返しに来たウルフ金串とジョーは酒場に行く。試合当日、元少年院収容生たちが集まる。
第46話「凄絶…果てしなき死闘」 世界タイトルマッチの最中、紀子はかつてのジョーとの会話を思い出す。

変更されたもの

時代設定が異なる
原作「あしたのジョー」の時代設定は、「週刊少年マガジン」連載時期と同じ1968~1973年でした。アニメ「あしたのジョー」はカーロス戦までなので1968~1971年です。
ところが、アニメ「あしたのジョー2」の時代設定は、アニメ放送時の1981年になっています。(「あしたのジョー」連載時にはリリースされていなかった)松田聖子の「青い珊瑚礁」「夏の扉」や山本譲二「みちのくひとり旅」がパチンコ屋のBGMで流れていることからです(「青い珊瑚礁」は第3話「地獄からの使者…矢吹丈」、「夏の扉」は第33話「アメリカから来た…13人目のキング」)。
この設定変更のため、登場人物の年齢が変更されたり、ボクシングのルールが連載当時のものから1981年当時のものに変更されています。例えば、1945年生まれで27歳(1972年連載当時)であった金竜飛が36歳(1981年)になっていたり(第19話「戦うコンピューター…金竜飛」。ちなみに、金竜飛以外のキャラクターの年齢は変更されていません。)、KO負けした選手は4週間出場停止になるとか(第5話「幻の…あのテンプルを撃て!」。ただ、これはプロではなくアマチュアのルールだと思うのですが)。
出番の増えたキャラクターが存在する
ウルフ金串・ゴロマキ権藤・元少年院収容生(青山やゲリラやガイコツ)など、原作ではそれほど出番のなかったキャラクターに出番が増えました。主要キャラクターだと終盤から登場しなくなる西や紀子・チビ連も出番が増え、ホセ・メンドーサも出番が増えました。
ジョーとカーロスの試合の経緯が異なる
原作ではエキジビジョンマッチ4回戦も公式戦10回戦も葉子の斡旋で行われました。アニメでは葉子の意思は関係なく、カーロスがジョーと戦うことを望んで試合が実現しました。
ジョーとピナンの試合の内容が異なる
原作では2ラウンドKOの予告通りにジョーがKO勝ちしましたが、アニメでは予告が実現できず、ジョーの3ラウンドKO勝ちでした。
ジョーのパンチドランカー疑惑の件の順番が異なる
原作では、ジョーのパンチドランカー疑惑はハワイ行きの前後から起こり、ハリマオ戦後に再び浮上しました。アニメではハワイ前後に起こったエピソードがハリマオ戦後に移動されました。
ジョーの野性衰退の設定が異なる
原作ではピナン戦後ジョーの野性が衰えたため、葉子がハリマオを招聘してジョーの野性を復活させました。アニメでは設定が変更され、ジョーの野性が衰えたのではなくパンチドランカー症候群の片鱗であったことになりました(このため、アニメでは葉子がハリマオ戦を企画してジョーのパンチドランカーを助長したことを悔やむ場面があります)。
声優が異なる
矢吹丈役のあおい輝彦と丹下段平役の藤岡重慶を除いて、キャラクターのほとんどが声優変更されています。後に「ドラゴンボール」のフリーザ・セル役を演じる中尾隆聖と若本規夫が、カーロス役と金竜飛役で出演しています。

削除されたもの

ジョーのドサ周り
ドサ周りを経験したボクサーがプロに復帰するという話は現実的でないため、ドサ周りのエピソード自体が省略されました。
ジョーとカーロスのスパーリング(二度目)・エキジビジョンマッチ4回戦
原作ではジョーとカーロスはスパーリングを二度、試合をエキジビジョンマッチ4回戦と公式戦10回戦の二度行っていますが、アニメでは二度目のスパーリングとエキジビジョンマッチ4回戦が省略されました。これはアニメ「あしたのジョー」と同じです。
ジョーと葉子のデート中の一部
原作ではデート中に葉子が「もうボクシングから身を退いたら?」とジョーにいうのですが、この場面はカットされました。
ジョーと葉子のハワイでの会話の一部
原作ではハワイで葉子がジョーのパンチドランカーを予想する場面がありましたが、アニメでは省略されました。
チビ連の「怖い」台詞
原作ではカーロス戦後にチビ連が丹下ジムに遊びに行かなくなり、サチが「最近のジョー怖い」というのですが、アニメでは省略されました。
ジョーとハリマオの試合の経緯
原作ではハリマオが横倉ジムの滝川修平と試合をした後にジョーと試合をしていましたが、アニメでは滝川修平との試合は省略されました。
ハリマオの「後方ひねり回転ダブルアッパー」と反則技
ジョーとハリマオの試合は、原作ではハリマオの飛翔戦法の後、「後方ひねり回転ダブルアッパー」とハリマオの反則技がありましたが、アニメではどちらもカットされ、ジョーがハリマオの飛翔戦法を破ってKO勝ちしました。

総評

とにかく原作と違うと評されることの多い「あしたのジョー2」ですが、具体的に何が違うのでしょうか。

まず、原作ではさほど出番のなかったウルフ金串・ゴロマキ権藤・元少年院収容生(青山やゲリラやガイコツ)などの出番が増えたことです。原作だと、ウルフ金串はゴロマキ権藤との一件以来、元少年院収容生は少年院以来全く姿を見せず、ホセ戦の観客席で突然出てきます。アニメではウルフ金串の金のエピソードや、試合当日に元少年院収容生たちが少年院時代を思い出すエピソードなどを挿入しています。

特に出番が増えたのはゴロマキ権藤です。原作だとウルフ金串の一件、ハリマオ戦前の「けんか」スパーリング、ホセ戦の観客席でしか登場しないのですが、アニメでは三連敗後のジョーと出会ったり、ドヤ街の廃屋でジョーと再会したり、世界タイトルマッチ前日に登場したりと、非常に出番が多くなっています。「けんか」スパーリングでは、詳しい内容も聞かずジョーの頼みを引き受けたりと、粋な性格が強調されています。アニメ化で最も恩恵を受けたのは間違いなくゴロマキ権藤でしょう。

あと、原作では紀子のデート以降姿を消した西・紀子やチビ連が、アニメでは出ずっぱりです。紀子はデート後もジョーと会話をする機会が多いですし、原作では唐突に起こった西と紀子の結婚式も、アニメでは事前に伏線が張られていました。彼ら(彼女ら)はホセ戦にも観戦に来ていました。

紀子の出番が増えたのに比べると、葉子は基本的に原作通りであまり変わり映えしません。むしろ、ジョーとのデートの会話がカットされたりと損している感があります。

劇場版「あしたのジョー」

アニメ「あしたのジョー」の総集編ですが、見るメリットはほとんどないと思われます。アニメ「あしたのジョー」を見ていない人でも「あしたのジョー」を楽しめるように作られた総集編……ならよいのですが、残念ながらそうではありません。尺にあわせてエピソードを切り貼りしているので、脈絡もなく場面が飛んだりします。

例えば、鑑別所でジョーと西が出会った後、ジョーの裁判を吹っ飛ばして、いきなり野菊島に向かう船に場面が飛びます。特に葉子の台詞のカットが多く、ジョーと葉子の関係性がまるで掴めません。第1話冒頭のジョーの闊歩など、アニメならではの魅力的な(ただし尺的には長い)部分も大体カットされており、アニメ版の魅力がほとんどありません。

この劇場版の価値は、主題歌が素晴らしいことぐらいでしょう。OP「美しき狼たち」、ED「K.O(ノックアウト)」です。

劇場版「あしたのジョー2」

アニメ「あしたのジョー2」の総集編ですが、これまた見るメリットがほとんどないものです。第1話冒頭の街を放浪するジョーを全部カットしていきなり丹下ジムに帰ってくるジョーを描いたり、金竜飛戦前の減量が省略、金竜飛戦がほぼ省略されていたりと、相変わらずの切り貼り編集です。

見る価値があるとすれば、白木葉子と林紀子の演技でしょうか。(声優が異なるので)アニメ版に比べれば格段に上手いのですが、アニメ版の声優に比べて低めでウィスパーぎみの声なので、実年齢よりも葉子と紀子がはるかに大人に感じます。あと、歌手のジョー山中がカーロス役をやっているので、それもおもしろいです。

あと、劇場版「あしたのジョー」と同じく、主題歌は素晴らしいです。OPは「明日への叫び」、EDは「青春の終章(ピリオド)~JOE…FOREVER~」です。どちらもジョー山中が歌っています。

OPは大変いい曲なのですが、一つだけ問題があります。「あしたのジョー2」の雰囲気とあわないのです。

出崎監督は、ジョーにとってのボクシングは人生の一部にすぎないと捉えており、アニメ「あしたのジョー2」では「ボクサー矢吹丈」ではなく「人間矢吹丈」に焦点を置いています。それはアニメ第一作「あしたのジョー」からの出崎監督の一貫した姿勢ですが、このOPで歌われているのは、明らかに「ボクサー矢吹丈」なのです。原作では途中からボクシング=ジョーの人生になってゆきますが、その雰囲気を継承したのが「明日への叫び」です。原作とは違う雰囲気で作られた「あしたのジョー2」の劇場版に原作に近い楽曲がつけられたのですから、皮肉な話です。

EDはよい曲ですが、まっ白に燃えつきたジョーの姿を映しながら流されると、「お涙頂戴」という感が否めないのが残念です。島本和彦とササキバラ・ゴウは『あしたのジョーの方程式』で、「『さあ、皆さんお待ちかねの名シーンがやってきましたよ』と言われているようで、なんか空々しい感じがしちゃう」といっていますが、その通りです。

今回はアニメ・劇場版「あしたのジョー」「あしたのジョー2」について説明しました。次回は、「あしたのジョー」の差別・放送禁止用語について説明します。

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アニメ・劇場版「あしたのジョー」「あしたのジョー2」について──「あしたのジョー」論その八」への1件のフィードバック

  1. はじめまして。

    >>「あしたのジョー2」の総集編ですが、これまた見るメリットがほとんどないものです。

     おおむね同意ですが、音楽や効果音、役者の演技力は劇場版の方が好きです。カーロスとジョーが公園でからむシーンはTV版だとジングルベルの曲が鬱陶しくて…。
     ホセ戦はTVに先行して作られた劇場版の方がテンポが良く、後でTV版を見ると水増し感があります。ラストの曲も余韻ぶち壊し(笑)。

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