シャーディー・ボバサ・ハサンについて──「遊☆戯☆王」論その七

「遊☆戯☆王」論第七回です。今回は、シャーディー・ボバサ・ハサンというキャラクターについて書きます。

※「遊☆戯☆王」論は全八回です。全記事一覧をご覧になりたい方は、タグ「遊☆戯☆王」か、記事「『遊☆戯☆王』論」をご覧ください。

目次

シャーディーの謎

「遊☆戯☆王」には謎の多いキャラクターが多いのですが、シャーディーは最大の謎といっても過言ではありません。その理由は、初期の「学園編」以降ほとんど登場しない上に、人物設定もほとんど明かされていないからです。

彼について分かっている情報といえば、

  • 墓守の一族である(マリクやイシズとは別の一族、ボバサと同じ一族?)
  • 千年錠と千年秤を所有している(所有の経緯は不明)
  • 「冥界の扉」「冥界の石盤」の存在を知っている
  • かつて所有者の見つからない「千年リング」「千年眼」を管理していた
  • 名前を名乗ったのは武藤遊戯が初めて

ぐらいのものです。

彼は「学園編」の遊闘13「エジプトから来た神〈おとこ〉(前編)」で初登場し、遊戯以外の初めての「千年アイテム」所有者として登場しました。「闇のゲーム」で闇遊戯と対決し、「千年アイテム」「血族」「闇の力」「扉」などの伏線を残しました。

遊闘20「決着」で遊戯たちの前から去った後は、「決闘者の王国編」の遊闘132「哀しみの千年眼」、「バトルシティ編」の遊闘231「過去の闇」などの回想で断続的に登場しました。

「王の記憶編」になって、遊闘281「超古代遺物の真実!!」でボバサが登場、遊闘321「大邪神降臨!!」でボバサがハサンに姿を変えたりと新キャラが出てくる一方で、シャーディーは相変わらず現れません(文庫版では若干登場していましたが)。

遊闘332「現世の石版!!」でハサンがシャーディーにそっくりであることが唐突に明かされましたが、詳しく説明されることもなく、彼は姿を消しました。

遊闘最終話「遊戯 王」で、崩れ去った「冥界の神殿」の粉塵の中に半透明で現れたりと、最後までよく分からない存在でした。

王の意志の代弁者シャーディー

シャーディーの初登場は遊闘13「エジプトから来た神〈おとこ〉(前編)」ですが、この話の時点で異様な設定を持っていることが分かります。

美術館に展示された王のミイラを見て涙を流しているのですが、遊戯にそのわけを聞かれると、「これは私の涙ではない」というのです。

これは私の涙ではない……
この…朽ち果てたその姿はまさに埃の人形…
それでもなお永遠なる偉大なファラオ…
その名とともに魂は生き続ける…

永遠なる眠りすら許されず…
魂の嘆きは涙となりて
私の頬を伝わる…

これが本当に「ファラオ」の流す涙なのか、それともシャーディー自身が泣いているのを「魂の嘆き」と呼んでいるだけなのかは謎です。この話を本当だとすると、(原理は不明ですが)シャーディーは「ファラオ」の魂と交信して、「ファラオ」の涙を代弁していることになります。

シャーディーが「ファラオ」の代弁者と思われる描写は、他にも見出されます。

我は三千年の墓守の血族──アヌビスの使徒……
お前の汚れた欲望によってまたひとつ…
王家の谷(ビハン・エル・ムルク)の神の眠る領域は冒された
よって貴様をここで裁く!

「使徒」を自認したり、王墓を暴いた金倉と吉森教授を裁いたりと、彼が「王」を守る存在であることが分かります。これは、「千年アイテム」が「罪人」を裁くためのものだという設定に由来するものでしょう(遊闘14「エジプトから来た神〈おとこ〉(後編)」)。第二回で見たように、この設定は後に嘘であることが分かるのですが……。

「千年アイテム」の真実はどうあれ、シャーディーが「千年アイテム」を持つ存在であり、「王」の意志を代弁する存在であることが分かります。

この設定は、「決闘者の王国編」の遊闘132「哀しみの千年眼」でも表れています。シャーディーが身につけている「千年錠」を含めると、「千年リング」「千年眼」「千年秤」と、実に四つの「千年アイテム」をシャーディーが管理しているのです。イシュタール一族が管理する「千年ロッド」「千年タウク」、王墓に安置され、後に武藤双六が盗み出した「千年パズル」を除いて、ほとんどの「千年アイテム」はシャーディーに管理されているわけです。

重要なのは、シャーディーは単なる「千年アイテム」管理人ではなく、「千年アイテム」所持者を見極める「試練」を課していることです。

ここで「千年アイテム」について振り返っておきましょう。遊闘141「呼び合う力」で闇バクラがいっていたように、「千年アイテム」とは「いずれ束ねられる運命をもった記憶の断片」です。第二回で見たように、王に献上されるまでは、邪悪な力の持ち主に渡らないように誰かが守らなくてはなりません。そこで、王の手に渡るまでの「所持者」が定められるわけです。

「所持者」を選ぶ「試練」を課すことは、「千年アイテム」を守る番人を決めるということです。それをシャーディーが任されているのは、彼が王の意志を代弁する人間だからです。

遊闘231「過去の闇」遊闘232「一族の闇!!」ではイシズ・マリク姉弟の前に現れ、彼はこんなことをいいます。

まもなく王(ファラオ)の魂が蘇る…
墓守りの者よ……
これからそなたらを導く運命…
血で血を分かつ一族の惨劇…
それらはすべて王(ファラオ)の意志なり
お前の父を死に追い遣ったのは
王(ファラオ)の魂なり…

イシュタール家の惨劇が起きたのは、マリクが11歳の頃です。武藤遊戯とマリクは同い年ですから、このとき遊戯も11歳ですが、この頃「千年パズル」は完成していないので、実は「王(ファラオ)の魂が蘇」ってなどいません。この台詞の真意は謎ですが、とにかくシャーディーが「王(ファラオ)の意志」の代弁者であることは一貫しています。

石盤の精霊ボバサ=ハサン

シャーディーに比べると、ボバサとハサンは比較的設定がはっきりしています。彼らの正体は、アクナムカノン王が「冥界の石盤」に封印した精霊です(遊闘324「聖墓の闘い」)。

ボバサの肉体には「千年アイテム」の窪みがあるのですが(文庫版では修正されていました)、「冥界の石盤」が「千年アイテム」を収めるものであることを考えれば、当然のことです。「千年アイテム」に「所持者」という番人がいるように、彼は「冥界の石盤」の番人です。

謎なのは、なぜハサンが現代ではボバサに姿を変えていたのかです。これを説明できないために、アニメ版ではボバサの設定を変更し、ただのNPCに変えてしまいました。高橋和希氏もその理由をきちんと考えていない気がするので、この設定変更は、整合性を持たせる上ではありだと思います。

シャーディーとボバサ=ハサンの関係

次に、シャーディーとボバサ=ハサンの関係についてです。これが最も厄介であり、恐らく答えの出ない問題です。

遊闘332「現世の石版!!」では、ハサンの横顔がシャーディーに似ていることから、遊戯やアテムはシャーディーだと考えました。しかし、ハサンは本当にシャーディーなのでしょうか。

第三回で見ましたが、古代エジプトには、現代のキャラクターとそっくりではあるが、同一人物ではないキャラクターが何人か登場します(セト・アイシス・シモン)。彼らは海馬瀬人・イシズ・武藤双六に酷似していますが、決して同一人物ではありません。すると、そっくりだからといって、シャーディー=ハサンとは限らないわけです。

遊闘296「魔物狩り!!」で、遊戯たちはセトを見て「海馬~!?」と誤解しています(後で「海馬に似た人」だと気づいていますが)。ですから、彼らがハサンを見てシャーディーと誤解したからといって、本当にシャーディー=ハサンなのかどうかは分かりません。

「史実」ではハサンはどうなったのか不明ですが、「闇RPG」の遊闘332「現世の石版!!」を読む限り、ハサンはゾークの攻撃を受けて消滅したようです。もし「史実」でも彼が同じように消滅したとすれば、彼は(アテムやアクナディンと違って)「千年アイテム」に魂を封印した様子もありませんし、そのまま魂が消滅した(あるいは冥界に行った)と考えてよいと思います。

あくまで私見ですが、シャーディーとは、ハサンの意志を受け継ぎ、現代にて王を守る存在であったのではないでしょうか。つまり、彼はハサンに似ていますが、ハサン自身ではない。

その理由の一つが、遊闘最終話「遊戯 王」の半透明のシャーディーです。このシャーディーが何者なのか、魂なのか精霊なのかは不明ですが、ハサンの姿ではなく、現代のシャーディーの姿をしていることが重要です。

「冥界の扉」を通るとき、アテムは学生服の遊戯の姿から、かつての王の姿に変わりました。もしハサン=シャーディーなら、シャーディーはあそこでハサンの姿で現れるのではないか。そうでないあたり、ハサンとシャーディーが別人である証拠だと思うのです。

シャーディー≠ボバサ=ハサンだと考えれば、シャーディーに仕えてきたといっていたのにハサン(シャーディー)と同一人物なのはなぜか、という矛盾も解消されます。理由は、ボバサ=ハサンではあるが、シャーディー=ボバサではないからです。

シャーディー=ボバサとすると、『ジョジョの奇妙な冒険』のドッピオとディアボロのような関係なのか、「ビックリマン2000」のW属なのかと頭を悩ます関係になりますが、そうではないのだと考えれば、そもそも問題は発生しません。

シャダとシャーディーには関係があるのか

名前も外見も似ており、「千年錠」まで持っているため、一時はシャーディーの正体ではないかと噂されたのがシャダです。結局関係はなかったようですが、初期の構想では、シャーディーの先祖をシャダにする予定であったのではないかと思っています。

その構想ができなくなったのは、セトとアクナディンの親子関係を重点的に描いたためにシャダの出番がなくなったこと、ぽっと出のボバサにキャラ付けするためにハサンやシャーディーと絡めざるをえず、シャダとシャーディーの絡みを描けなくなったことなどがあるでしょう。

「王の記憶編」全般にいえることですが、セトとアクナディンの親子関係を描いたために、アテムとセトの宿命、セトとキサラの関係、アテムとバクラの関係などが疎かになった感があります。

シャーディーとバクラの「五年前」

遊闘234「闇VS闇!!」で、闇バクラが「五年前なら奴はすでに…!!」と驚くシーンがあります。この伏線は結局回収されなかったのですが、一体何を意味していたのでしょうか。

アニメの第201話「開かれた記憶の扉」では、シャーディーの肉体がバクラに既に滅ぼされたという設定が追加されました。これは「五年前」の設定を受けて追加されたものでしょう。

実際にバクラがシャーディーを殺したのかどうかは不明ですが、後に続く言葉は生死に関わることだと考えてよいでしょう。「奴はすでに…!!」という場合、後には「死んだはず」「この世にいないはず」といった言葉が続くと考えられるからです。「エジプトにいないはず」とかもありえますが、バクラがシャーディーの滞在地を細かく把握しているとも思えませんし、それで驚くのも変なことです。

私が気になるのは、この話を聞いた後、バクラが「……」と呆然とした顔をしていることです。あのバクラがここまで驚くこと自体珍しいのですが、そもそも、自分が殺した相手が生きていると分かったとき、呆然とするものでしょうか。むしろ、「殺したと思っていたのに」と悔しがったり怒ったりしないでしょうか。

このことから、バクラがシャーディーを殺したとは私には思えない。いや、殺す可能性はあるのですが、殺した上でこの反応は不自然ですし、第一殺すメリットがあまりありません。バクラは、「千年アイテム」に関する情報を集めるため、武藤遊戯を「闇RPG」まで殺さずに生かしておいた男です。まして、「千年アイテム」の秘密を最も握っているシャーディーを早々に殺すとも思えない。「千年アイテム」の手がかりがなくなり、かえって「冥界の扉」が遠のいてしまうからです。

私の考えでは、「モンスター・ワールド編」のように、バクラはシャーディーを人形に封印し、意のままに操ろうとしたのだと思います。バクラもシャーディーも「冥界の扉」を開くことを目的としていますが、シャーディーの目的は王の魂を冥界に還すこと、バクラの目的は「闇の力」を手に入れることですから、両者の利害は対立します。バクラからすればシャーディーはじゃまですが、「千年アイテム」の手がかりとなる人物でもあるので、殺すわけにはいかない。そこで、人形に封印し、シャーディーを利用しようとしたのではないか。

ところが、「千年アイテム」を持つ上に、王の代弁者であるシャーディーですから、そう簡単に封印される相手ではありません。抵抗された挙句、シャーディーが何らかの事故で死んでしまった(とバクラには思われた)。それで、バクラはシャーディーが死んだと誤解したのではないでしょうか。

今回はシャーディー・ボバサ・ハサンについて書きました。次回は、海馬瀬人について書きます。

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