「王の記憶編」の「史実」について──「遊☆戯☆王」論その五

「遊☆戯☆王」論第五回です。今回は、「王の記憶編」(いわゆる「記憶編」「古代編」)の「史実」について考えます。

※「遊☆戯☆王」論は全八回です。全記事一覧をご覧になりたい方は、タグ「遊☆戯☆王」か、記事「『遊☆戯☆王』論」をご覧ください。

目次

「史実」を考えることの難しさ

第二回でも述べましたが、「王の記憶編」はあくまで「闇RPG」であって、「史実」ではありません。ただ、「史実」と思われる箇所もあり、どこからどこまでが「史実」なのかははっきりしません。

「王の記憶編」以前でも「史実」に言及されたことはありますが、いずれも断片的な描写にとどまり、「史実」全体を把握するには不十分です。

遊戯王@2ch辞典の「史実」の記事は、これらの描写をかき集めて、「史実」で起きたと思われる事象を年表にまとめたものです。この年表はよくまとまっていますが、作中の描写が少なく、記載できる情報が少ないために、内容がスカスカです。特に、特に、「最終決戦」「セトとの対決」「王VS闇の大神官」など、ほとんど経過が分かっていません。

今回は、「史実」で何が起こったのかを、私の推測も含めて述べてゆきます。

作中の「史実」描写

そもそも、「史実」とは何を基準に判断しているのでしょうか。

「遊☆戯☆王」において三千年前の歴史が語られるとき、以下のいずれかの方法をとります。

  1. 三千年前の状況が直接描写された
  2. 登場人物が伝聞情報として語っていた
  3. 「千年アイテム」がビジョンを見せた

1番は、「王の記憶編」のことですね。どこまでか本当か分からないのが「王の記憶編」ですが、わずかながら、「史実」として描かれた部分があります。

2番は、登場人物が情報を語ることです。語るのはシャーディーやマリク・イシズ・ボバサなどの墓守の一族か、バクラのどちらかが多いです。墓守の一族は、情報の典拠(「死者の書」とか「先祖代々の伝聞」とか)に怪しい部分があるので、少し信憑性に欠けます(詳しくは第二回参照)。バクラの情報は正しいと思われますが、「冥界の石盤」や「冥界の扉」に関する情報ばかりで、三千年前の歴史についてはほとんど語っていません。

3番は、「千年アイテム」が三千年前のビジョンを見せるというものです。これは「バトル・シティ編」で二回起こりました。遊闘229「蒼い記憶!!」と遊闘257「宿命の記憶!!」で、「千年ロッド」が見せたビジョンです。

作中で出てきた三千年前の描写・情報を、1・2・3番の形式で整理すると、以下の表のようになります。

1番: 直接描写 2番: 伝聞情報 3番: ビジョン
  • 遊闘287「父の影」
  • 遊闘305「闇の支配者!!」
  • 遊闘308「千年アイテムの誕生!!」
  • 遊闘14「エジプトから来た神(おとこ)」
  • 遊闘144「復讐の行方」
  • 遊闘146「古の石版」
  • 遊闘201「決戦の闘士達!!」
  • 遊闘263「勝敗を分かつ魔物」
  • 遊闘264「たくされる一枚(カード)」
  • 遊闘229「蒼い記憶!!」
  • 遊闘257「宿命の記憶!!」

遊闘287「父の影」は、アテム幼年期と生前のアクナムカノンの姿の一瞬を描いただけで、考察には役に立たない描写です。

遊闘305「闇の支配者!!」は、アクナディン(闇の大神官)が「史実」を語った貴重な回です。

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遊闘308「千年アイテムの誕生!!」は、昏睡状態にあったアクナディンの回想です。「千年アイテム」成立の歴史が語られます。

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遊闘14「エジプトから来た神(おとこ)」は、「千年アイテム」に関する設定が初めて明かされた回です。シャーディーが説明しているのですが、この説明は(後から見ると)矛盾する箇所があり、シャーディーが嘘の情報を知らされていたのでしょう。

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遊闘144「復讐の行方」では、若き王と六神官が、邪悪なる力を「聖なる扉」に封印したことが明かされます。この「聖なる扉」は、恐らく「闇の扉」「冥界の扉」のことです。

ちなみに、「若き王は六人の神官とともに」とありますが、神官の一人であるアクナディンが「闇の大神官」となっているのですから、「邪悪なる力」を封印したのは五神官のはずです。これを後付による矛盾ととるか、この時点ではアクナディンは裏切っていなかったととるかは微妙な問題です(私は前者だと思いますが)。

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遊闘146「古の石版」はイシズ、遊闘201「決戦の闘士達!!」はマリクの情報です。「千年アイテム」によって「魔物」を「石版」に封印していたこと、神官や魔術師たちが「闇の力」を利用し、争いを始めたことが分かります。ただし、「千年アイテム」が「『闇』を封印するために生み出」されたというマリクの情報はデマです。

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遊闘263「勝敗を分かつ魔物」遊闘264「たくされる一枚(カード)」では、「記憶の石盤」に刻まれた碑文「死者への祈り(ペレト・ケルトゥ)」の存在が明かされます。セトがアテムのために記したものだそうです。

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遊闘229「蒼い記憶!!」遊闘257「宿命の記憶!!」では、女(キサラ?)を抱く神官と白き竜の石版、王と対峙する神官が描かれます。

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「史実」と「闇RPG」の違い

以上が、作中で「史実」と思われる描写です。こうして見ると、「千年アイテム」成立については(アクナディンの回想があるので)かなり分かっていますが、王宮戦争については、「史実」と確定できる部分はほとんどないですね。

上記の「史実」と、「闇RPG」の食い違いを挙げておきましょう。

  1. 「史実」ではアクナディン(闇の大神官)が王と神官団に戦いを挑んだのに、「闇RPG」では大邪神ゾークとアクナディン(闇の大神官)が戦いを挑んだ。
  2. 「史実」ではセトが「闇に服従する」つもりはないといっていたのに、「闇RPG」では父アクナディン(闇の大神官)の邪念に支配されていた。
  3. 「史実」ではアテムがセトにとっての「永遠の敵」とされていたのに、「闇RPG」ではセトがアテムを敵視する理由がない。

これらの食い違いを元に、「史実」では大邪神ゾークが召喚されなかったのではないかとか、「史実」ではアテムがセトの恨みを買ったのではないかとか議論されています。

なお、3番については『遊☆戯☆王』文庫版の後書きで作者の説明があり、王への忠誠に背いてキサラ救出に向かったが、既にキサラ亡き後であり、アテムにもアクナディン(闇の大神官)に属さず、彼らに復讐することになったそうです。

ただ、これはこれで疑問が残ります。遊闘329「魂尽きるまで!!」遊闘330「伝説の守護神!!」で、父であり師であるアクナディンの意に背くほど王への忠誠心の強かったセトが、愛だけで簡単にアテムを裏切るとは思えないからです。

以上が作中で「史実」と確定している部分ですが、これだけだと三千年前の歴史についてほとんど何も分かりません。

「闇RPG」から「史実」を考える

上記を元に「史実」を空想してもよいのですが、これだけだと要素が少なすぎて、空想にしかなりません。「史実」を考えるためには、やはり「闇RPG」を参考にするしかないでしょう。「闇RPG」を元に、ここは「史実」に沿っていると思われる、ここは「史実」ではないと推測してゆきます。

推測の前に、確認をしておきます。「闇RPG」は、「史実」とは以下の点で異なります。

  1. 「プレイヤー」(アテム・バクラ)が存在しており、特殊能力を発動できる
  2. 現代の知識を持っているPCが存在する(アテム・アクナディン・ハサン)
  3. アテムは、自分の名前を知らないが、M&Wに関する知識を持っている

この三つの要素が「史実」とは異なります。いいかえれば、この三つの要素を利用して進められたシナリオについては、「史実」とは異なっていると考えられます。

この三つと、上で見た「史実」を元に、「闇RPG」の中で、明らかに「史実」と違う箇所を挙げます。

  • 遊闘303「闇を切り裂く力!!」で、武藤遊戯(NPC)たちの協力を得て、アテム(PC)がラーの翼神竜を召喚した
  • 遊闘305「闇の支配者!!」で、アクナディン(プレイヤー)が「記憶の巻き戻し」を発動した
  • 遊闘332「現世の石版!!」で、武藤遊戯(NPC)たちがアテム(PC)を助けに来た
  • 遊闘334「生き残りし者!!」で、セト(NPC)がアクナディン(PC)の邪念に支配された
  • 遊闘335「白き龍!!黒き魔術師!!」で、千年錐が砕かれることなくアテム(PC)が消滅した

三千年前にはいなかった武藤遊戯たちが介入したり、プレイヤーの特殊能力が発動した場合は、明らかに「史実」でないと確定できます。また、アクナディン(PC)の邪念や千年錐などは作中の「史実」と異なるので、これも違います。

次に、「史実」かどうか微妙なものを挙げます。

  • 遊闘288「神の名のもとに」で、アテム(PC)がオベリスクの巨神兵を召喚した
  • 遊闘299「迎撃の王宮!!」で、アテム(PC)がオシリスの天空竜を召喚した
  • 遊闘319「記憶世界の『駒』!!」で、バクラ(プレイヤー)が「時の停止」を発動した
  • 遊闘320「闇・R・P・G!!」で、アクナディン(PC)が大邪神ゾークを召喚した
  • 遊闘322「幻のNPC!!」で、ハサン(NPC)が大邪神ゾークの攻撃を防いだ
  • 遊闘333「王の名のもとに」で、アテム(PC)が名前を知り、光の創造神ホルアクティを召喚した
  • 遊闘336「光を継ぐ者」で、セトが王位を継承した

三幻神やホルアクティの召喚、大邪神ゾークの召喚が該当します。

三幻神とホルアクティの召喚

まず三幻神の召喚です。

遊闘289「至高の鉄槌!!」でシモンがいっていたように、三幻神の名前は謎とされており、「選ばれたファラオ」だけがそれを継承できます。が、アテムが三幻神の名前を知っていたのは、現世のM&Wの知識があったからで、「選ばれたファラオ」であったからとは限りません。すると、「史実」では三幻神を召喚できなかった可能性がある。

いや、遊闘305「闇の支配者!!」でオベリスクが描かれているように、最終的には召喚できました。が、盗賊王バクラ戦ではまだ召喚できなかったかもしれません(アニメ版では、「史実」では召喚されなかったという設定になっていました)。

私見ですが、恐らくアテムは「史実」でもオベリスクを召喚できたのではないかと思われます。理由は二つです。

第一の理由は、オベリスクを召喚する以外に、アテムが盗賊王バクラを撃退する方法がないからです。

一回目の盗賊王バクラ戦でオベリスクを召喚できなかった場合、盗賊王バクラが二回目の王宮戦争を仕掛けるまでもなく、王宮は崩壊していたはずです。白き龍もキサラも登場していないこの段階では、盗賊王バクラのディアバウンドに対抗できるのは三幻神しかいないからです。オベリスクを召喚できなかったとすると、この時点でアテムと六神官は殺され、七つの「千年アイテム」も奪われていたでしょう。

第二の理由は、ここでバクラ(プレイヤー)が特殊能力を発動しなかったことです。

もし「史実」ではオベリスクが召喚されなかったとすると、「闇RPG」でオベリスクが召喚されたことは、バクラ(プレイヤー)と盗賊王バクラ(PC)にとって予想外のピンチです。このときのディアバウンドは、「千年リング」もオシリスの特殊能力も「闇迷彩」もありませんから、オベリスクに勝つのは不可能であり、それはバクラ(プレイヤー)もよく分かっていたはずです。にも関わらず特殊能力を使わなかったのは、これが「史実」通りであり、ここで盗賊王(バクラ)がやられても特に問題はないと考えていたからではないでしょうか。

同じ理由で、オシリスも「史実」通り召喚されたと思われます。唯一の例外はラーで、これは遊戯たちの助力によって召喚され、しかも盗賊王バクラ(PC)が死んでしまいましたから、さすがにまずいと思って「記憶の巻き戻し」を発動したのでしょう。

なお、ホルアクティの召喚ですが、これは可能ではあったものの、アテムの魂(バー)の都合でできなかったのではないか、と思っています。

ホルアクティは遊戯(NPC)たちの協力で召喚したのだから「史実」にはいなかったはずだ、と思われるかもしれませんが、そうとは限りません。なぜなら、「闇RPG」と違って、「史実」のアテムは自分の名前を知っていたからです。「神を束ねる」ことの条件が王の名だというなら、三千年前のアテムにもそれができた可能性があります。

ただ、ラーの翼神竜召喚のときもそうでしたが、「アテム」が力尽きそうなとき、遊戯たちが駆けつけて、三幻神を召喚するというケースがあります。ホルアクティもそのパターンで、遊闘331「魂の灯す光!!」でゾークの「カタストロフ」を食らったとき、アテムの魂(バー)は風前の灯でした。それが復活したのは、遊戯たちとの「結束の力」によるものです。

王の名前を知っている以上、ホルアクティを召喚することはできたと思います。ただ、遊戯たちのような仲間がいなかった三千年前では、魂(バー)を回復する手段がなく、ホルアクティは召喚できなかったのではないでしょうか。

バクラ(プレイヤー)の「時の停止」

次に、バクラ(プレイヤー)の特殊能力である「時の停止」です。

これは「特殊能力」なのだからあるはずがない、と思われそうですね。確かにそうなのですが、私はそうともいいきれないのではないか、と思っています。

「記憶の巻き戻し」と「時の停止」の違いは、遊戯たちにも影響が及ぶかどうかです。「記憶の巻き戻し」は遊戯たちにも影響が及び、彼らはアテムと引き離されましたが、「時の停止」のときは、遊戯たちは影響を受けていないのです(遊闘319「記憶世界の『駒』」)。

この違いは説明されていませんが、遊戯たちが古代エジプトの住人でないことと関わりがあるのではないか。「闇RPG」では「特殊能力」という形をとっていますが、実は「史実」においても「時の停止」と同じことが起きており、遊戯たちは「史実」に登場しないのでその影響を受けないのだと思います。

まあ、単なるご都合主義で、「史実」でも「時の停止」などなかっただろうといわれればそうなのですが、バクラ(PC)がゾークを「時の支配者」と呼んでいる以上、本当に時間を操る能力を持っていても不思議ではないと思います。

セトと王位

「闇RPG」では、砕かれなかった「千年錐」をセトが受け継ぎ、セトが次代の王になっています。

「史実」では「千年錐」は砕かれたのですが、セトが王位を継承したかどうかは謎です。遊闘336「光を継ぐ者」で描かれた「栄光という名の光」が、「史実」なのか「闇RPG」の続きなのか判然としないためです。

一部では、セトは「史実」でも王になったのではないかといわれます。それは、「千年眼」には、受け入れた者の願いを叶える機能があるからです。アクナディンが遊闘308「千年アイテムの誕生!!」で、息子セトを王にせよと願った以上、セトの即位が実現されなくてはなりません(アニメではこの設定が無視されていましたが)。

私は、セトは「史実」では王にならなかったと考えています。「千年錐」が存在しないので、王位を継承できないからです。アテム自身がいっていたように、「千年錐」とは「王の証」です。いくら先代の王アテムと血縁関係があるとはいえ、「王の証」を持たないセトに王位継承権など認められないでしょう。

今回は「王の記憶編」の「史実」について書きました。次回は、「王の記憶編」とアニメ「ドーマ編」について書きます。

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