「千年アイテム」「冥界の石盤」「冥界の扉」の謎──「遊☆戯☆王」論その二

「遊☆戯☆王」論第二回です。今回は、物語の鍵を握る「千年アイテム」「冥界の石盤」「冥界の扉」について書きます。

※「遊☆戯☆王」論は全八回です。全記事一覧をご覧になりたい方は、タグ「遊☆戯☆王」か、記事「『遊☆戯☆王』論」をご覧ください。

目次

「千年アイテム」

「千年アイテム」とは、簡単にまとめれば、以下のようなものです。

  • 古代エジプト王国の国難を救うため、「千年魔術書」に記された「闇の錬金術」に基づき鋳造された、闇の力を秘めた七つの宝物。
  • アクナムカノン王の弟・アクナディンと、魔術師たちによって作られた。ただ、実際には、大邪神ゾークがアクナディンを操って作らせた。
  • 所有する者は、「石版(ウェジュ)」に封印された「魔物(カー)」を具現化することができる。
  • 千年アイテムごとに固有の機能を持つ。
  • 七つの千年アイテムを「冥界の石盤」に収めると、「冥界の扉」が開かれる。

「千年アイテム」とは「闇の錬金術」によって作られた宝物であり、現世に「闇の力」をもたらした元凶でもあります。この「闇の力」が元で王宮戦争が勃発し、大邪神ゾークが復活したわけですから、すべての始まりといえるアイテムです。

「バトルシティ編」や「王の記憶編」を通じて、「千年アイテム」の謎の多くが明らかになったのですが、結局明かされなかったり、むしろ謎が増えた部分もあります。それを説明してゆきます。

なぜ古代と現代で「千年アイテム」の機能が変化しているのか

「王の記憶編」を読むと、古代エジプトでの「千年アイテム」の機能が、現代とは一部異なることが分かります。それを以下の表にまとめました。

「千年アイテム」 古代にのみ登場する機能 現代にのみ登場する機能
「千年錐(パズル)」 (特になし) 王の失われた記憶を投影し、歴史を再現する機能
「千年リング」 (特になし) (特になし)
「千年眼」 人の「心」に宿る「カー(魔物)」を読み取り、具象化する機能 人の「心」を読み取る機能
「千年錠」 人の「心」に宿る「カー(魔物)」を覗く機能 人の「心の部屋」を覗く機能
「千年秤」 「カー(魔物)」を融合する機能 (特になし)
「千年タウク」 「千年アイテム」所持者の未来は見ることができない機能 (特になし)
「千年ロッド」 「カー(魔物)」を「ウェジュ(石版)」に封印する機能 人を洗脳する能力・「古代神官文字」を理解できる啓示を与える機能

「千年リング」は古代も現代も変わりませんし、「千年錠」「千年眼」「千年秤」「千年タウク」も、若干の違いはありますが、現代とほぼ同じです。

不自然なのは、「千年錐(パズル)」と「千年ロッド」です。

まず「千年パズル」ですが、遊闘323「世界崩壊!!」で、「失われた記憶の投影機」「歴史の再現装置」という機能があったことが明らかになりました。

しかし、古代エジプトの「千年錐」にはこんな機能はありませんでしたし、あるはずがありません。というのも、アテムの生前には「記憶」は失われていませんから、「失われた記憶の投影機」という機能など持っているはずがないからです。

ということは、「失われた記憶の投影機」という機能は、アテムが記憶を失った後に付与されたものですが、なぜこんな機能がついたのでしょうか。アテムとアクナディンの魂が封印されて砕かれたことによって、多少の機能の変化があったのでしょうか。

次に「千年ロッド」です。こちらは「千年錐」や「千年リング」「千年眼」と違って、魂も邪念も封印されていませんから、なぜ能力が変わったのか、猶更分かりません。

なぜ「千年リング」に「人格」が宿っているのか

闇バクラによれば、「千年アイテム」とは、「時を超えて古の「心」を宿すことのできる墓標」遊闘50「千年の敵1」)だそうです。

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しかし、「千年アイテム」の中で「心」が宿っていたのは、「千年パズル」と「千年リング」だけです。闇マリクは「千年ロッド」とは関係のない人格ですし、シャーディー・ペガサス・イシズにはもう一つの人格は確認されていません。ということは、「千年アイテム」の中で、「心」が宿っているもののほうが少数派なのです。

では、闇バクラは誤解していたのでしょうか。あるいは、連載途中で設定が変更されたのだと片づけてもよいのですが、依然として疑問が残ります。

「千年パズル」は、アテムが魂を封印して砕かれたわけですから、「心」が宿っているのは当然です。しかし、誰かの「心」が封印されたわけでもない「千年リング」に、なぜ「心」が宿っているのでしょうか?

この疑問は、闇バクラの正体にも関わる重要な疑問なので、ここですぐに結論を出すことはできません。次回以降で詳しく論じることにします。

なぜ「千年アイテム」の伝承が異なるのか

前述のように、「千年アイテム」とは、元々古代エジプト王国の国難を救うために作り出されたものです。国難の後は、罪人を裁く神官の宝物として使われました。

しかし、作中の「千年アイテム」の説明を読むと、結構違いがあるのです。

シャーディーは「『王墓をあばき財宝を盗みだす罪人』を裁くために生みだされた」といっていますし(遊闘14「エジプトから来た神(おとこ)(後編)」)、マリクは「『闇』を封印するために生みだした」といっています(遊闘201「決戦の闘士達!!」)。
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「千年アイテム」は「裁く」ために作られたわけではありませんし、「『闇』を封印する」というのはむしろ逆で、「千年アイテム」が生まれたからこそ「闇」がもたらされたのです。

「千年アイテム」や王の記憶に関する真相を知る彼らが、「千年アイテム」の誕生について知らないようですが、これはなぜでしょうか。

率直にいえば、途中で設定が変わったために矛盾が生じたのだと思いますが、そう解釈するのもおもしろくないので、整合性のある解釈を考えてみました。

マリクやシャーディーたちが「千年アイテム」や王の記憶に言及する時、「死者(ペル・エム・フル)の書」にそう書かれている、という傾向があります。つまり、墓守の一族の情報のほとんどは、「死者の書」を典拠としているのです。

ここで、ある仮説を考えます。「死者の書」とは、古代エジプトの王宮にとって都合よく書かれていたのではないか、という仮説です。

この説を述べるにあたって、「死者の書」の説明が必要でしょう。「死者の書」とは、死者が冥界でも幸福に生きられるように、訓示や祈祷文をパピルス紙に記したものです。詳しく知りたい方はエジプトの死者の書古代エジプト人と死後の世界をお読みください。

重要なのは、「死者の書」は、それまでの経文と違って、一般人にも読まれたということです。

古代エジプトでは冥界の存在が信じられていましたが、そこに行けるのは王族に限られるとされていました。ですから、死者のための経文も、王族のピラミッドや棺にしか書かれませんでした。一般庶民はあの世に行けないのですから、そんなもの書く必要がないのです。

ところが、時代が下り、王族以外でも冥界に行くことができると信じられるようになりました。すると、ピラミッドや棺を持たない一般人の死者に対しても、経文を書いてあげたくなります。そこで、パピルス紙に経文を書くようになりました。これが「死者の書」です。

つまり、ピラミッドの壁画や棺と違って、「死者の書」は多くの人の目に入るわけで、王宮にとって都合の悪いことが書かれるとまずいのです。王宮は「正義」なのですから。

そこで、「千年アイテムは九十九人のクル・エルナ住人の生贄から作られた」とか「闇の力を秘めている」といった都合の悪い事実を抹消し、「罪人を裁いた」とか「闇の力を封印した」とか、王宮にとって都合のよい記述だけを残したのではないか。それを墓守の一族が読み、王宮に都合のよい「千年アイテム」の事実だけが語り継がれていったのではないでしょうか。

なぜ「千年アイテム」は守られてきたのか

なぜ「千年アイテム」は、三千年の時を超えて守られてきたのでしょうか。それは、王(アテム)の記憶を取り戻し、王の魂を冥界に還すためです。

しかし、「千年アイテム」を守るということは、「冥界の扉」が開き、大邪神ゾークが復活する恐れもあるということです。現に、それを危惧した碑文が残されていることが、遊闘144「復讐の行方」の闇バクラの独白で明らかになっています。

クル・エルナ村の地下神殿に安置された石盤にはこう記されている……

若き王は六人の神官とともにその命を犠牲にし
邪悪なる力を聖なる扉の奥に封印した
我は願う…王の記憶とともに邪悪なる力が蘇らぬことを…

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極端な話ですが、誰かが千年アイテムを一つでも破壊してしまえば、七つのアイテムが揃わないわけですから、大邪神ゾークが復活する恐れはなくなります。なぜそうしなかったのか?

これは、(前回説明した)原作『遊☆戯☆王』の「運命」観を踏まえると理解できます。

『遊☆戯☆王』では、万物は、あるべきところにあるべきだという「運命」観があります。「人の魂はすべて……帰るべき場所がある……」遊闘233「闇の闘争!!」)というイシズの言葉は、その一例です。

この「運命」観からすると、「千年パズル」に封印されたアテム・アクナディンの魂と、「千年リング」に封印されたバクラ(ゾーク?)の魂は、冥界に還るべきです。彼らは既に死者だからであり、死者の魂が現世にとどまるのは「運命」に反するからです。

ところが、「千年アイテム」を破壊してしまうと、三人の魂は、永遠に冥界に還れなくなります。それは「運命」に反することですから、いかに大邪神ゾークの復活が恐ろしいとはいえ、「千年アイテム」を破壊してはなりません。三人(特に王)の魂が冥界に還るまで、守り続けなくてはならないのです。

しかし、「千年アイテム」が不用心に管理されていると、墓荒らしや盗賊に盗まれ、「冥界の扉」を開けてしまう恐れがある。そこで、「千年アイテム」を分散させ、墓守の一族に管理させることにしたのでしょう。「千年アイテム」が分散していれば、七つ揃わない限りは「冥界の扉」が開く恐れはないからです。

そして、墓守の一族には、「命を捨てても守らねばならない」(遊闘165「石版の記憶」のマリクの言葉)という掟を課し、彼らが「千年アイテム」を悪用したり、破壊することがないようにした。原作では説明されていませんが、恐らくはこんな事情でしょう。

「冥界の石盤」

「冥界の石盤」とは、闇バクラによれば、「この世とあの世を結ぶ超古代遺物(アーティファクト)」遊闘281「超古代遺物の真実!!」)です。盗賊王バクラも「この世とあの世を結ぶ呪われた石盤」(遊闘313「死霊の村!!」)だといっているので、古代でも現代でも機能は同じのようです。

「千年アイテム」を作るために利用され、七つの「千年アイテム」を収めると「冥界の扉」が開くようになっています。「千年アイテム」同様、極めて重要な位置を占めるアイテムです。

「冥界の石盤」が初登場したのは、遊闘132「哀しみの千年眼」のペガサスの回想シーンです。ここで、シャーディーが石盤を「王の記憶の石盤」と呼んでいます。

表記が二つあってややこしいのですが、ここは「冥界の石盤」で統一します。

「冥界の石盤」の碑文は誰が彫ったのか

先ほども述べましたが、「冥界の石盤」には、王と神官に関する記述があります(遊闘144「復讐の行方」)。もう一度、台詞と画像を引用します。

クル・エルナ村の地下神殿に安置された石盤にはこう記されている……

若き王は六人の神官とともにその命を犠牲にし
邪悪なる力を聖なる扉の奥に封印した
我は願う…王の記憶とともに邪悪なる力が蘇らぬことを…

millennium-item-4

しかし、「冥界の石盤」は、王宮戦争よりも前から存在していたものです。ということは、王宮戦争が終わった後、誰かが石盤に碑文を彫ったと考えられます。一体誰が彫ったのでしょうか?

王宮戦争に関わっていた何者かが彫った(あるいは彫らせた)と思われますが、「若き王は六人の神官とともに」とあるので、恐らくアテムと六神官ではないでしょう。次代の神官が彫らせたのか、墓守の一族の誰かが彫ったのか、それは分かりません。

なぜ「冥界の石盤」が存在するのか

「千年アイテム」は、国難を救うために作られたという経緯があります。が、では「冥界の石盤」はなぜ存在するのか、誰に作られたのかは明らかにされていません。

遊闘321「大邪神降臨!!」によれば、「千年アイテム」とは、大邪神ゾークがアクナディンを利用して作られたのだそうです。ということは、「冥界の石盤」も大邪神ゾークが作ったのでしょうか? あるいは、誰が作ったのでもなく、昔から存在していたのでしょうか?

なお、アニメでは、「千年アイテム」を作る石盤と「冥界の石盤」とが別々という設定になっています。「千年アイテム」が作られたとき、地中から「冥界の石盤」が出現し、そこから大邪神ゾークの意志が現れました(第206話「千年アイテム誕生の秘密」)。ゾークが「冥界の石盤」を作りだしたということでしょうか。

「冥界の扉」

「冥界の扉」は、現世と冥界を繋ぐ扉です。大邪神ゾークを召喚したり、アテムの魂が冥界に還るときに開けられました。

「扉」の存在自体は初期から示唆されており、シャーディーが「お前ならあの扉を開けることができるかも…」といっていました(遊闘20「決着」)。

この後、しばらく「扉」の存在には言及されませんでしたが、遊闘144「復讐の行方」「聖なる扉」遊闘179「全力で行け!!」では「闇の扉」遊闘281「超古代遺物の真実!!」「冥界の扉」と呼ばれていました。ちなみに、台詞はいずれも闇バクラです。

この記事では「冥界の扉」で統一して表記します。

「冥界の扉」とは物理的な「扉」なのか

「冥界の扉」は、クル・エルナ村の地下神殿に存在しており、ウジャト眼が刻まれた扉です。以下の画像は、遊闘338「闘いの儀!!」から引用したものです(「冥界の扉」を、赤丸で示しています)。

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ところが、「王の記憶編」を見ると、地下神殿に「冥界の扉」など見当たりません。遊闘312「ファラオ発見!!」の以下のコマが分かりやすいのですが、赤丸の箇所は「冥界の扉」ではなく、ただの壁です。

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遊闘321「大邪神降臨!!」のゾーク降臨の場面を見ても、「冥界の扉」が開いている様子はありません。「扉」というのは、物理的な「扉」のことではなく、あくまで比喩的な意味だと思われるのですが、現代になると、なぜか物理的な「扉」ができているのです。まあ、これは重箱の隅をつつくような指摘ですが……。

「冥界の扉」はどのような条件を満たせば開くのか

作中で「冥界の扉」が開いたのは計三回です。ところが、三回とも開く条件が違います。

時系列順でいうと、最初に開いたのは、三千年前アクナディンが大邪神ゾークを召喚したときです。このときは、七つの「千年アイテム」を「冥界の石盤」に収めることで、「冥界の扉」が開きました(これは史実ですが、「闇のTRPG」でも同様です)。

次に開いたのは、遊闘132「哀しみの千年眼」のペガサスの回想シーンです。ペガサスが千年眼を受け入れたとき、冥界にいるシンディアと再会するという願いが叶いました。このとき、実は「冥界の扉」が開いているのです。
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「冥界の扉」は七つの「千年アイテム」がないと開かないはずなのですが、千年眼一つで「冥界の扉」を開いてしまいました。他の「千年アイテム」でも、やろうと思えば、一つだけで「扉」を開けるのでしょうか? 千年眼だけが特別なのでしょうか?

三回目に開いたのは、遊闘最終話「遊戯 王」で、アテムが冥界に還るときです。このときは、七つの「千年アイテム」を「冥界の石盤」に収め、「闘いの儀」を行った後、王の名をウジャト眼に捧げるという手続きを踏みました。冥界の扉が閉じた後、「二度と冥界の扉が開かれることはないでしょう」とイシズがいっているので、これが最後なのでしょう。

「千年眼」による開きは例外としても、なぜ三千年前と現代で開く条件が違うのかは、原作には明確に描かれていません。アニメではこれを明確に描いており、第208話「生きていたファラオ」で、アテムが自分の名前を条件に「冥界の扉」を封印したからだとしています。

今回は「千年アイテム」「冥界の石盤」「冥界の扉」について説明しました。今回の内容を元に、次回から「王の記憶編」について書きます。

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