中島義道というならず者がいる

このブログではときどき中島義道について言及していますが、読者の中には、「そもそも中島義道って誰?」「どの本を読めばいいの?」という方もいらっしゃるかもしれない。

そこで、今回は中島氏についての紹介と、中島義道作品のブックガイドを書きます。

なお、私自身が中島義道をどう思っているかについては、明日12月15日の私の中島義道論にて書きました。

2013年12月18日追記: この記事は元々「中島義道という蛮族がいる」という記事名でした。これは、中村紘子『ピアニストという蛮族がいる』という本からとったものです。

しかし、中島氏の著書に『哲学者というならず者がいる』というものがあり、中島氏について紹介するなら、こちらのほうがふさわしいかと思い、記事名を「中島義道というならず者がいる」に変更致しました。

私は今回の記事以外にも、中島義道はアスペルガーか「人生の意味」の意味など中島義道についていくつか記事を書いています。ご興味のある方はご覧ください。

中島義道とは

中島義道の半生についてはWikipediaに詳しいので、それをご覧ください。ここでは、中島氏の考えについて説明致します。

死へのこだわり

中島義道の根底にあるのは、「この私(中島)がいつか死に、そして永遠に生き返らない」という問いです。

中島氏は子供の頃からこの問いに囚われ、毎日気が狂いそうになって生きていたらしい。「ぼくは自分が死なないとわかっていたら、哲学なんてしなかったろうねえ」『「哲学実技」のすすめ』)と述懐するほど、中島氏の人生に決定的な影響を及ぼしています。この問いについて考えることが、中島氏の人生ともいえるのです。

自己中心主義

中島氏は前述の問いにこだわっているわけですが、この問いはあくまで中島氏自身にとっての問いであり、「人類が死から救われるにはどうすればよいか」というような人類的な問いではありません。中島氏にとって重要なのはあくまで自己自身であり、他人をどうこうするという話ではないのです。

こうした姿勢から、中島氏は自己中心主義を貫きます。具体的には、仕事・会議・冠婚葬祭などから極力手を退き、自分のためだけに時間を使い、他者のために自分の時間を削らないことです。こうした生き方を、彼は「人生を半分降りる」と表現しています。

少数の感受性に対する視線

中島氏は、生き方・食生活・趣味などがことごとく一般常識から外れている人です。彼は自身を「マイノリティ」、自分とは異なる大多数の一般人を「マジョリティ」と呼ぶのですが、その「マジョリティ」を盛んに批判します。「マジョリティ」が数の暴力によって「マイノリティ」の感受性を無視していること、抑圧していることを徹底的に批判します。

彼の著書に通底するのは、「マジョリティ」であることに胡坐をかいて「マイノリティ」の感受性を無視してはならない、彼らの感受性に鈍感であってはならないという立場です。こうした立場が、後述の「言語による闘争」と関係してきます。

言語による闘争

上記の点だけだと、中島氏は世俗を離れた仙人にも思えるのですが、おもしろいのはここから。中島氏は世俗を離れるどころか、むしろ世俗や他者と戦うのです。

中島氏は、日本の都市が騒音に満ちていること、電線や建物によって景観が醜くなっていることを批判し、それらを作っている人たちに闘争を仕掛けます。違法駐輪する一般人に注意をしたり、役所に駆けこんで注意を喚起したり、電車でマナーの悪い乗客を注意したりします。中島氏が「闘う哲学者」と呼ばれるようになったのは、こうした背景があってのことです。

自己中心主義なのに、なぜこんなことをするのか? それは、中島氏の哲学観によるものでしょう。

中島氏は、「自分はこう思うけど、皆はああ思う。皆違って皆いい」という相対主義者ではない。哲学とは普遍的な真理を求めるものだという立場から、あくまで「自分も皆もこう思う」というものを追求しています。

ここで、闘争の話に戻りましょう。騒音や景観問題においても中島氏は「マイノリティ」なわけですが、彼は「自分はマイノリティ、皆はマジョリティ。だから、なるべく離れて暮らそう」とは考えない。逆に、「自分はこう思う。あなたもこう思うべきではないか? あなたがああ思うなら、それはなぜなのか議論しようではないか」と、徹底的に「マジョリティ」に戦いを挑むのです。そして、「自分も皆もこう思う」という真理の追究を、実生活において実践しているのです。

大まかですが、中島義道について解説しました。中島氏の哲学的立場について書いてもよかったのですが、そうした「解説」を中島氏ご自身は最も嫌がるでしょうから省略します。中島氏の哲学について知りたい方は、著作を読んでみてください。

中島義道ブックガイド

ブックリスト

ここからは、「中島義道の本を全く読んだことがない」という方向けのブックガイドです。

中島義道の本は、以下のように分類できます(なお、中島氏の本は表にあるもの以外にもたくさんあります)。読むのがめんどうでしたら、流し読みで結構です。

種類内容書名

自伝作品 中島義道氏の人生について語った本。自伝を元にした小説も含まれる。
考察本 「生き方」「好き嫌い」「幸・不幸」といった人生論的概念に焦点を当てた本。
社会論 騒音・景観・言語などの社会問題への取り組みを描いた本。
対話篇 書簡や対話形式で、人生や生き方について語った本。
哲学書 様々な哲学書を参照しつつ、中島氏の哲学を披歴する本。
哲学研究書 専門のカントを中心とした哲学の研究書。カント以外だとニーチェなど。
哲学案内書 「哲学とはいかなるものか」を説明した本。

注釈をつけておくと、中島氏の作品の多くはいくつかのジャンルにまたがっています。「哲学案内書」には中島氏の自伝的叙述がありますし、「考察本」に哲学的叙述があったりもします。ですので、どの叙述が多くを占めるか、という基準で分類をしています。

上記の表の分類をもっと簡単に分けると、

  • 自伝作品
  • エッセイ作品
  • 哲学作品

の三つです。上の表でいうと、「自伝作品」は「自伝作品」に該当し、「哲学作品」は「哲学書」「哲学研究書」「哲学案内書」に該当し、「エッセイ作品」はそれ以外のすべてです。恐らく世間で広く読まれているのは「自伝作品」「エッセイ作品」で、「哲学作品」については一部の哲学好きに好んで読まれています。

初心者向けの推奨著作

ここからは、具体的に著作を紹介します。

まず、中島本を全く読んだことがない方向けには、『私の嫌いな10の言葉』を薦めます。

これは、私が最初に読んだ中島氏の本です。この本を薦めるのはそれもあるのですが、中島氏の本の中でも多くの人の共感を得やすいものだからです。

中島氏の本は過激な主張が多く、ファンでさえも不快感・反感を示すものが少なくありません。一方、この本については、挙げられている「10の言葉」が(中島氏だけでなく)多くの人にとって気に食わないという理由から、中島氏に共感しながら読めるでしょう(そうでない方もいるでしょうが)。また、自伝的叙述がほとんど出てこないのも初心者に優しいところです。

この本を読んで不快になった人は、中島義道の著作にそもそも向いていないと思われます(別に向いていなくてもよいのですが)。この本は中島作品の中では穏和なほうなので、他の作品を読むともっと不快になるでしょう。

逆に、この本をおもしろいと思った方は、次に『孤独について』『「哲学実技」のすすめ』をお薦めします。どちらから読んでもよいのですが、『孤独について』が先の方がよいかもしれません。

『孤独について』は中島氏の「自伝」そのものともいえる作品で、生い立ちから大学時代・ウィーン時代から帰国した頃までを詳細に描いた作品です(後半には、「孤独」に関する自己中心主義が提唱されます)。中島義道の原点ともいえる本で、中島氏と相性がよいのか悪いのか、これで分かります。

『「哲学実技」のすすめ』は、哲学案内書ではあるのですが、同時に「中島氏と一般人の考えの違いを鮮明に表す本」でもあります。この本には、「哲学」「善悪」「幸福」「真理」など、中島氏が多くの本に書いているテーマすべてが入っています。

この本は対話形式なのですが、対話を重ねるごとに、中島氏の話を聞いていた生徒が徐々に消えてゆくという展開になっている。消えていった生徒とは、かつて中島氏に夢や理想を抱いて近づいたものの、失望を抱いて去って行った人たちです。つまり、この本を読んで、中島氏に共感するのか、あるいは去ってゆく一般人に共感するのかで、中島氏との相性が判断できるのです。

中島ファン向けの推奨著作

『孤独について』『「哲学実技」のすすめ』を読んで、それでも中島義道を読みたいと思った人は、中島氏の大概の本は読んで共感できるはずです。ただし、中島氏の本には内容が重複しているものもあるので、すべてを読む必要はありません。そこで、特にお薦めの著作を挙げておきます。

考察本では、『人生を「半分」降りる』『ひとを”嫌う”ということ』が優れています。あとは、お好みで『不幸論』でしょうか。

社会論だと、『「対話」のない社会』がおもしろいでしょう。『うるさい日本の私』『醜い日本の私』もありますが、『「対話」のない社会』と大して変わりません。

対話篇は、私はあまり好きでないのですが、挙げるとすれば『カイン』『働くことがイヤな人のための本』でしょう。ただ、この二冊は他の著作と内容が結構被っているので、既視感を覚えるのは否めません。

哲学案内書については、『哲学の教科書』『哲学の道場』。「哲学とはどのようなものか」が大変分かりやすく書かれた二冊(ただ、内容はかなり違っています)。様々な文章を引いて、哲学の特徴や問題について解説したのが前者。後者は、中島氏の学生時代の哲学経験や実際の哲学書から、哲学とは何かを説明しています。どちらかではなく、どちらも読むことをお薦めします。

哲学書・哲学研究書についてですが、いずれも難解かつ読者を選ぶので、これといったお薦め本がありません。強いていえば、『カントの人間学』です。これでカントに興味を持つことができれば、他の本を読んでみるのがよいでしょう。

今回は中島義道について紹介するにとどめましたが、明日は中島義道に対する私の考えを述べることにします。

2013年12月18日追記: 中島氏が主宰されている哲学塾カントについてですが、『哲学塾授業』にて授業模様が読めます。塾生については『非社交的社会性』に詳しい記述があります。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中