赤木しげると死(3)-「反英雄」論その七

さて、赤木しげるの死に関する最後の論考です。前回は、須原一秀氏の著書『自死という生き方』と天の発言を引用しつつ、赤木の死の受容について考えたのでした。

前回、赤木の死の受容について二つの考えがあると述べました。一つは「極み」「最高の時」を経験していたからだと前回述べました。今回は、そのもう一方についてです。

そして、これは赤木の死生観と密接に関わりのあるものです。

※「反英雄」論は全七回です。全記事一覧をご覧になりたい方は、カテゴリ「英雄」「反英雄」論か、タグ「赤木しげる」をご覧ください。

赤木の死生観

9月24日の記事で、通夜編での浅井銀次との会話を後に取り上げると書きました。東西戦でのひろゆきとの会話でも同じ内容を喋っているので、これと一緒に取り上げましょう。

ひろゆきとの会話

俺たちは人間の前 なんだったかな…?
命はつながっている…
随分前から 俺はそんな考えを持つようになった…
人間としての俺が滅んだら 土くれになって
その後何千年か経って また何かに再生される
(中略)
ただ唯一問題なのは 人間としての俺がくたばった時
この「俺」だという気持ち 意識が吹っ飛ぶ…
そこが問題だ…

銀次との会話

もし…何かが…言うなら魂…?
あるいはある種の意識…「生」が残っているとしたら
それは痛い・痒いという神経…あのしち面倒くさい体や脳とつながってねえんだから
どうもこれは 生身の今より
数段すごし易そうだ…

要するに砂や石や水…
通常俺たちが生命などないと思ってるものも
永遠と言っていい 長い時間のサイクルの中で 変化し続けていて
それはイコール 俺たちの計りを超えた…
生命なんじゃないか…と……!
死ぬことは……
その命に戻ることだ…!

福本伸行『天』第88話「訣別」

福本伸行『天』第88話「訣別」

福本伸行『天』第144話「意識」

福本伸行『天』第144話「意識」

単純に読むと、「人間の前」「魂」といった言葉から、赤木は魂の存在や不死性を信じているように読めます。

また、以下の銀次の台詞も真実でしょう。

若い頃からズーッと「死」を隣に置いてきた者だけが持つ…
そのことを特別なことと考えない感覚…
………なんというか………
元々「死」と仲良しなんだな…
そういう感覚を持っていること

福本伸行『天』第144話「意識」

福本伸行『天』第144話「意識」

しかし、若い頃から死と隣あわせに生きてきた赤木とはいえ、「命はつながっている」という自然観を持つものでしょうか。特に宗教を信じているわけでもない赤木が、なぜこうした自然観を持つに至ったのか。

これを考える鍵が『アカギ』の鷲巣麻雀の南二局にあります。南二局の採血後、赤木は臨死体験(?)のような経験をしており、亡き平山幸雄(ニセアカギ)に会っているのです。

このときの体験が本当に臨死体験なのか(本当にあの世に行ったのかどうか)、赤木の見た幻想なのかは分かりません。ただ、主観的には赤木は臨死体験をしたのであり、「死者に会い、現世に戻ってきた」という経験が、赤木の死生観に影響を与えたことは想像に難くありません。

そして、重要なのは、この経験を経て、赤木が「生きねぇとな」「生きてるって実感」を初めて味わったことです。

そして、これが恐らく赤木にとって初めての(前回述べた)「極み」「最高の時」だったのではないでしょうか。

私の考えを述べると、赤木はこの経験を経て、「亡霊」のような生き方から「生きてるって実感」を持った生き方へと転換し、死の受容の準備を始めたのではないでしょうか。

この経験を経る前の赤木(つまり13歳~19歳の赤木)は、「『死』と仲良し」というより、生きる意味が分からず、闇雲に死に突っこんでいただけに見えます。鷲巣麻雀前に仰木が「人生に飽く」と指摘していたのは、赤木のこうした暴走を指していたものです。

この経験を経て、赤木は「極み」「最高の時」を経験するようになり、やがては(銀次のいうように)「『死』と仲良し」になっていったのではないでしょうか。本当の意味での「死を受け入れる」ということです。

鷲巣麻雀がまだ終了していないので、迂闊なことはいえませんが、今後は赤木は闇雲に死にたがることはなくなると思います。ただ、今後は生きると同時に「死を受け入れる」準備を始めることになるでしょう。その準備が、約30年後の赤木の通夜に繋がるのです。

前回と今回の内容をまとめます。赤木が死を受け入れることができたのは、人生においていくつもの「極み」「最高の時」を経ることができたためと、若い頃から(鷲巣麻雀を機に)死の受容も行っていたためです。

今後の『アカギ』の展開に期待しつつ、赤木の命日に合掌。

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