人のため、自分のため

昨日「英雄」的生き方について書きましたが、これに少し敷衍します。

まず、私の好きな作品で、他にも「英雄」のいた作品を思い出しました。

  • 『BLACK LAGOON』(広江礼威原作)
  • 「ひとかた」(お竜氏)

この二つです。

誰かの命が、名誉が、明日があたしにかかっているのなら、そのために戦うこと以外にあたしに何が出来るんですか?
(『BLACK LAGOON 5』雪緒の台詞)

あたしは、普通に生きたかった。普通に生きることを望まなかったあなたと、同じ所にいるはずなのに。
(同書)

「普通に生きたかった」少女・鷲峰雪緒が、ヤクザの抗争に巻きこまれ、自分の家に仕えるヤクザたちのために「闇」に生きることを決めます。悲壮な「英雄」の決意です。
しかし、元々「普通に生き」ていた彼女が、すぐに「英雄」的生き方に切り替えられるはずもなく、その心中は複雑です。

バラライカも同じく、旧ソ連軍の同胞のために「英雄」にならざるをえなかった人でした。

「ひとかた」の南護も、(ゲームのネタバレになるので詳述は控えますが)中盤で自らの「英雄」としての使命と「人間」としての生き方に悩む場面が見られます注1

自分のために戦う者たち

前回の記事の注釈でこんなことを書きました。

いうまでもないことですが、「キャラクターであることを辞める」ことについては、本項で書いた「誰かを守るために戦う」以外にもたくさんの事例があります。

私は「誰かのために」生きることが「英雄」だと考えているので注2、彼らを昨日の「英雄」リストからは除外しました。
ただ、「英雄」でなくても、自分の「キャラクター」に悩み苦しむ登場人物に惹かれるところは多々あります。

「誰かを守る」以外の目的で戦う作品のうち、私の好きなものが二つあります。

  • 『ベルセルク』(三浦建太郎原作)
  • 『巨人の星』(梶原一騎原作、川崎のぼる作画)

この二作品です。

『ベルセルク』のグリフィスは、「俺は俺の国を手に入れる」という「夢」のために生き、「”夢”という名の神の殉教者」たらんとする者です。

もしあいつらのために……死者達のために……オレに何かしてやれることがあるとしたら それは勝つこと あいつらが…命を懸けてまでしがみついたオレの夢を為し遂げるために勝ち続けることだ
(『ベルセルク(7)』)

何百何千の命を懸けながら自分だけは汚れずにいられるほど……それほど……オレの欲しいものはたやすく手に入るものではないんだ 
(同書)

という言葉にあるように、彼は数多くの「命」を踏み台に生きています。
彼にとっての「夢」とは、第一には自分のためですが、「仲間たちのため」という「英雄」的側面も見えます注3

そんな「半英雄」の彼が、唯一「夢を忘れ」るきっかけとなったのがガッツでした。
最後には蝕のときに仲間を捧げてしまいましたが、彼が「夢」と「ガッツ」との間で揺れ動いていたのは確かでしょう。

『巨人の星』(梶原一騎原作、川崎のぼる)の星飛雄馬も、自分のために戦い悩む人間です。

父・星一徹に「野球人間」として育てられた星飛雄馬は、最初は父や野球を恨んでいたものの、やがて野球に魅せられるようになります。

一徹は巨人軍への復讐のために飛雄馬を育て上げたわけですから、「Seraphic Blue」のヴェーネと同じく、生まれつき使命を押しつけられた「英雄」ともいえます。

ただし、途中から野球に魅せられた飛雄馬は、父や巨人軍のためでなく、自分のために戦うようになります。
そして、これは同時に、「野球人間」として生きてきた彼にとってジレンマにもなります。

アームストロング・オズマや美奈との出会いを通じて、自分が「野球ロボット」であることに苦悩し、「人間らしく生きたい」と思い始めます。

その結果が有名な「クリスマス・パーティー」の話に繋がり、結局彼は「野球ロボット」として生きることを余儀なくされるわけですが……。

注釈

  1. 正確な台詞を忘れてしまったのですが、「皆の幸せはどうなるの」と問われたとき、「それなら俺の幸せはどうなる?」と問い返す場面がありました。護が自分の存在理由を考え始めた頃だけに、とても印象的な台詞です。 本文に戻る
  2. 「本人が意図していなくても、結果的に誰かのためになることもあるのではないか?」という反論もありえますが、とりあえず「誰かのためという意図があれば英雄」という動機説を採用しています。動機説v.s.結果説の議論は終わりが見えないのでここでは置きます。 本文に戻る
  3. ただ、受肉以降は「どうやらオレは自由だ」という発言にあるように、かつては仲間として愛おしんだガッツや鷹の団を歯牙にもかけなくなってきた感もあります。  本文に戻る
広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中